出口剛司会員より、関東社会学会定例研究会のご案内をいただきましたので、お知らせいたします。
関東社会学会定例研究会「理論というフィールド=ワーク」
関東社会学会定例研究会(テーマ部会A)
テーマ: 理論というフィールド=ワーク
日時: 2020年12月26日(土)14:00~17:00
報告: 高艸賢(日本学術振興会)
「シュッツ現象学はいかなる意味で『社会学理論』なのか?」
小田切祐詞(神奈川工科大学)
「前規範的批判――『胎児の条件』におけるボルタンスキーの企て」
討論者: 赤堀三郎(東京女子大学)、中倉智徳(千葉商科大学)
司会: 三浦直子(神奈川工科大学)、出口剛司(東京大学)
会場: Zoomによるオンライン形式で開催
研究例会への参加を希望される方は、12月20日(日)までに、以下のリンク先
( https://forms.gle/2CgdsPmatMLwhqnCA )のGoogleFormにて、必要事項を記入し、送信して下さい。前日までにオンライン参加に必要な情報をお知らせします。
連絡先: 東京女子大学現代教養学部
流王貴義
Email:ryuo[at]lab.twcu.ac.jp([at]を@に置き換えてください)
【テーマ部会・研究例会の趣旨】
関東社会学会テーマ部会Aでは、12月の学会大会のテーマ部会、同月の研究例会(第1回研究例会)をつうじて、社会学の理論はいかなる社会記述を可能にするか、という観点から理論の形成及び社会学的認識において理論が果たす役割を明らかにする。一般に理論とは、仮説と検証の反復によって抽出される体系的かつ斉一的な命題と理解されている。このような理論観に従うならば、理論研究とは「具体的」な社会現象が生成するフィールドにおいて、時系列的・空間的比較という作業によって、具体性を束ねる「抽象的」命題を構築することと理解されるであろう。しかし、実際の理論研究の場において、こうした事実の仮説検証によって理論が生成することはむしろ例外である。またこうした理解の下では、具体=抽象の二項対立図式が前提とされており、抽象的命題が所与の具体的諸事実をあたかも包摂するかのようにイメージされている。しかし実際の理論形成の現場では、概念やその体系としての理論命題それ自体によって、新たな事実そのものが生産=発見されている。たとえば、ジェンダー、エスニシティ、ハビトゥスといった概念は、セックス、ネイション、階級とは異なる水準にあらたなる実定性(positivity)を発見することにより、これまでにない未知の事実、フィールドそのものを生産してきたといえる。
本部会では、こうした社会学的理論研究のあり方を「理論というフィールド=ワーク」という表現で明確化することにより、社会学理論を経験世界の「抽象化」とみる通俗的な見方を清算し、理論が社会学的認識だけでなく、対象そのものを生産する現場に立ち会うことをめざす。
第1回研究例会では、アルフレート・シュッツ及びリュック・ボルタンスキーの社会学理論を取り上げる。シュッツにとって理論とは、経験的研究によって更新・修正されるべき仮説や現象の特定の側面を切り取るための枠組ではない。シュッツの「基層理論」としての理論観を検討しつつ、従来の経験的研究や現象の所与性を前提とした社会学理論の超克、拡張をめざす。また、生命倫理学や哲学といった他分野の理論的資源に依拠しながら、中絶の経験を描き出す新たな理論モデルを形成していったリュック・ボルタンスキーの仕事に注目する。ボルタンスキーは理論の中に現実に対する批判力(前規範的批判)を見出したのであり、そうした理論の潜勢力に注目することにより、同じく仮説=検証型理論に回収されない理論構築の可能性を明らかにする。これらの理論生成の現場に立ち合うことにより、理論形成のダイナミズムを明らかにし、理論研究と実証研究との新たな協働をイメージする一助としたい。