大会・研究例会

2024年度研究例会「道徳と価値をめぐる現代的課題」(3月16日)のご案内

2024年度研究例会「道徳と価値をめぐる現代的課題」

 今期の研究委員会では、これから2年間の研究例会・大会シンポジウムをスタートするにあたって、「道徳と価値」をテーマとして設定し、企画を進めていくことにしました。社会学において道徳や価値の問題は、その初期から現在にいたるまで、理論的な課題に取り組む際にも、社会的現実の課題に取り組む際にも、非常に重要な位置を担ってきました。しかしながら、社会学におけるその位置づけは、時代の流れとともに大きな変化を遂げてきたように思われます。たとえば、ある段階まで、道徳や価値は社会の接着剤としての機能が大いに期待され、社会の統合や秩序維持の理論的基盤に位置づけられてきましたが、その後、そうした前提への信頼が徐々に失われていくにつれ、道徳や価値は社会の統一性を支えるものや共有されるべきものというよりも、それを侵食し分断を招くものとして認識されるようになってきたと言えるかもしれません。現代社会では、階級、ジェンダー、世代、エスニシティ、宗教、政治、科学、テクノロジーなどを媒介として多様化した道徳や価値がますます複雑に絡み合い、一方では衝突と分離を、他方では融和と結合を生み出すことで、絶えず新たな社会的・文化的・政治的な境界線が引き直され続けているように見えます。このように考えると、「道徳と価値」の問題は、社会学の古典的な課題でありながらも、現代においてあらためて問われるべきアクチュアルな課題として浮上してきます。もし道徳や価値がこれまで期待されてきた社会の統一性や共通性の基盤としての位置を理論的に失いつつある、もしくは失ってしまったとするならば、現代の社会学(理論)は、この「道徳と価値」という問題にどのように向き合うことができるのか、という課題です。

 以上のような問題意識のもと、2024年度研究例会では、「道徳と価値をめぐる現代的課題」をテーマに掲げ、この課題の社会学的なアクチュアリティを探求していきたいと思います。例会当日は、呉先珍氏(東京大学)と堀内進之介氏(立教大学)にご報告をお願いし、片桐雅隆氏(千葉大学名誉教授)と三津田悠氏(高千穂大学)にコメンテーターとして論点を深めていただくことで、道徳や価値という観点から現代社会にアプローチすることの意義や可能性について検討したいと考えています。

日時:2025年3月16日(日)13:30~16:30(オンライン開催)

報告者:

呉先珍(東京大学)「AI技術と退行的進歩――『レトロトピア』の今」

堀内進之介(立教大学)「モラルラグと対抗的進歩――『知性改善論』の今」

討論者:片桐雅隆(千葉大学名誉教授)、三津田悠(高千穂大学)

司会:村井重樹(島根県立大学)、梅村麦生(神戸大学)

報告者プロフィール:

呉先珍(お・そんじん)
東京大学大学院情報学環B’AI Global Forum特任助教。専門は批判的社会理論・社会思想史。時間とはかけ離れた問題とされてきた自己疎外を「時間からの疎外」として再構成することで時間論と疎外論、両者の刷新をもたらす理論形成に取り組んでいる。主な研究業績に「『どこか他の場所』から『非場所』へ――Z.バウマンの後期理論におけるユートピアの構想 」(『社会学評論』291、2022年)、「時間からの疎外をいかに描くべきか——真木悠介とE.レヴィナスの時間論の比較検討を通して」(『現象学と社会科学』4、2021年)。

堀内進之介(ほりうち・しんのすけ)
立教大学文学部教育学科特任准教授。専門は政治社会学・応用倫理学。単著に『データ管理は私たちを幸福にするか? 自己追跡の倫理学』(光文社新書、2022)、『善意という暴力』(幻冬舎新書、2019)、『人工知能時代を<善く生きる>技術』(集英社、2018)、『感情で釣られる人々 なぜ理性は負け続けるのか』ほか多数。共著に『あやうく、未来に不幸にされるとこだった』(東洋経済新報社、2024)、『SENSE:インターネットの世界は「感覚」に働きかける』(日経BP、2022)、『AIアシスタントのコアコンセプト』(BNN出版、2017年)ほか多数がある。

※研究例会は参加無料です。当学会の会員でない方もご参加いただけます。

※当日の資料は配布いたしません。あらかじめご了承ください。

※研究例会への参加を希望される方は3月11日(火)までに下記のリンク先のGoogleフォームにて必要事項を記入し、送信してください。前日までにオンライン参加に必要な情報をお知らせします。
GoogleフォームURL: https://forms.gle/s7AuoH4vw4FFf14Q7

問い合わせ先:
日本社会学理論学会事務局
Email: sst[@]sst-j.com([ ]を削除してください)