第14回大会「テーマセッション」報告者募集について
第14回大会(9月7・8日、東洋大学)における「テーマセッション」について、4月15日を締め切りにテーマを募集しておりましたが、2件の応募があり、理事会にていずれも採択されました。以下のように報告者を募集いたします。
・報告希望者は、セッション名、氏名、所属、連絡先(住所、メールアドレス)、報告概要(タイトル、400字程度の報告要旨)を記して、6月30日(自由報告部会と同じ締め切り)までにメールにて事務局宛にお申し込み下さい。
・応募した報告希望者についてコーディネータが調整を行って、報告者・報告順を決定し、テーマセッション部会が設置されます。
・今大会のテーマセッションでは非会員の報告も可とします(大会参加費をお支払いただきます)。1部会は3~5報告によって構成されることとし、部会の報告者の半数以上が会員であることとします。
・テーマセッションの報告者として応募したが調整の結果不採択となった場合や、その部会が成立しなかった場合は、自由報告部会で報告することができます(非会員は自由報告部会に移動して報告することはできません)。
・なお、同一大会でテーマセッションと自由報告部会の両方で報告することはできません。
採択されたテーマセッションの詳細は以下のとおりです。
【1】労働者像の社会学的(再)記述
コーディネータ:松永伸太朗(長野大学企業情報学部企業情報学科)
部会趣旨:
産業社会学や労働社会学は、労使関係論を中心とした経済学的視点と問いを共有しながら発展してきた。このことは、労働研究という学際的領域の中に置かれた必然であるとともに、労働研究における社会学の独自性を曖昧にさせる危うさを持つものでもあった。
こうした状況のもとで、社会学独自の労働研究のあり方を再考する必要がある。本セッションではその中でも有力な方向性の一つとして、「労働者像」に着目した社会学的研究の報告を募集したい。
産業・労働社会学の中で重要とされてきた研究は、その黎明期から社会に生きる私たちの労働者に対する捉え方に問いを突きつけるものであった。代表的なものでは、理論的には矛盾するはずの企業への帰属意識と労働組合への帰属意識が日本企業の労働者では同時に高くなることの意味を示した尾高邦雄の「二重帰属意識」に関する研究などが挙げられる。この他にも産業・労働社会学は、質問紙調査・聞き取り調査を駆使しながら労働者の意識を把握する方法によって、労働者像の(再)記述に取り組み続けて来たのである。
本セッションではこうした方向性を現代的な文脈において引き継ぎ展開する報告を求める一方で、現状分析に限られない視点(文書資料による歴史社会学的分析、労働者像に着目した社会学史的研究など)や、そもそも「労働者」であるとはいかなることであるのかを理論的に問い直す視点など、これまで産業・労働社会学の中で必ずしも積極的に取り組まれてこなかったタイプの議論も求めたい。なぜなら、近年隣接分野で「労働の趣味化」や「やりがい搾取」など労働の意味それ自体の揺らぎに関する議論や、クリエイティブ産業論などをはじめとして従来の労働研究が関心を払ってこなかった産業の労働者に着目する議論が存在感を強めているからである。本セッションでは、複数のデータ・方法論に基づく「労働者像」への社会学的(再)記述を重ね合わせることで、現代における社会学独自の労働研究のあり方の可能性を探りたい。
【2】理論社会学と批評的想像力
コーディネータ:片上平二郎(立教大学社会学部社会学科)
部会趣旨:
「社会学」という学問は、単に大学や学会に閉じるかたちでこれまで存在してきたわけではない。たとえば、社会運動や福祉活動、ジャーナリズムなど狭義の学問の世界の外側のさまざまな世界と結びつき、互いに活性化をしあいながら、学問的蓄積を生み出してきたと言える。今回のテーマセッションでは、そのような「社会学」と「その外側」の関係について、「理論社会学」と「文化批評/文芸批評」の間の相互作用について着目することを通じて考えていきたい。
1990年代以降、「文化批評」や「現代思想」というジャンルの中でカルチュラルスタディーズやポストコロニアリズムの流行と相まって、「社会学」的視座が大きな力を持つようになったと語られることは多い。このことは「批評」や「思想」の世界に変化をもたらすとともに、「社会学」という枠組みについても、少なからぬ影響を与えたと言えよう。
そもそも、ジンメルやフランクフルト学派の流れ、もしくは日本国内において見田宗介や作田啓一らの名前とともに「社会学」の歴史を見てきた時に、文学や文化に対する「批評的想像力」が「社会学的想像力」を活性化してきたことはたしかなこととしてあるはずだ(たとえば、「critical theory」は「批評理論」と訳すこともできる)。ただ、他方でこのような「批評的想像力」の混入は、「科学」としての「社会学」という立場を揺るがす危ういものであるとする立場もありえるだろう。
このような問題関心に基づいて、「理論社会学」と「批評的想像力」の結びつきについて、さまざまな立場から論じていく場として本セッションを企画した。「社会学」と「他領域」の関係について、「橋渡し/密輸/搾取/鎖国」など、多様な比喩を用いた見方が可能であるだろう。活発な議論の空間としたい。