今期の研究委員会では、「道徳と価値」を2年間の共通テーマとして設定し、研究例会・大会シンポジウムの企画を進めています。社会学において「道徳と価値」の問題は、古典的な課題でありながらも、現代においてあらためて問われるべきアクチュアルな課題としても浮上しています。道徳や価値は社会の統合や秩序維持の基盤として理論的に位置づけられてきた一方で、今日ではむしろそうした基盤を侵食し分断を招くものとしても認識されています。もし道徳や価値がこれまで期待されてきた社会の統一性や共通性の基盤としての位置を理論的に失いつつある、もしくは失ってしまったとするならば、現代の社会学(理論)は、この「道徳と価値」という問題にどのように向き合うことができるのか。以上の共通テーマに基づき、2024年度研究例会は「道徳と価値をめぐる現代的課題」、2025年度大会シンポジウムは「道徳・価値の「分断」を問う」と題して実施いたしました。
そして2025年度研究例会では、「モビリティーズと道徳」をテーマとします。特に現代社会における情報通信技術や交通手段の発展と人・モノ・情報の移動の拡大は、社会と道徳の結びつきをいっそう揺るがせつつ、人々の統合と分断の双方の可能性をもつものとして、道徳の意義についてあらためて再考を促しています。そこで今年度の研究例会では、今日の「道徳と価値」の問題を、現代社会学に「移動論的転回」をもたらした「モビリティ・パラダイム」(ジョン・アーリ)をもとに考えていきたいと思います。
例会当日 は、吉野浩司氏(鎮西学院大学)と徳田剛氏(大谷大学)にご報告をお願いし、討論者は本学会の鈴木弥香子(東邦大学)と奥村隆(関西学院大学)が務めます。お二人のご報告と討論者によるコメントを踏まえて、モビリティーズ(人・モノ・情報の移動)の観点から現代社会における道徳と価値の問題について考える可能性について、フロアを交えて検討したいと考えています。
日時:2026年3月15日(日)13:30~16:30(オンライン開催)
報告者:
吉野浩司(鎮西学院大学)「社会移動と利他主義―P.A.ソローキンと亡命」
徳田剛(大谷大学)「多文化共生概念はstranger’s ethic を担保しうるか―移民政策研究の視点から」
討論者:鈴木弥香子(東邦大学)、奥村隆(関西学院大学)
司会:伊藤美登里(大妻女子大学)、梅村麦生(神戸大学)
報告者プロフィール:
吉野浩司(よしの・こうじ)
鎮西学院大学総合社会学部教授。専門は社会学史。特にロシアからアメリカに亡命した社会学者P.A.ソローキンと、日本の経済学と社会学の基礎を築いた高田保馬の社会学思想の再検討を行っている。近年は、小城市立歴史資料館所蔵の高田保馬が残した膨大な一次資料の整理を行っている。単著に『意識と存在の社会学』(昭和堂、2009年)、『利他主義社会学の創造』(昭和堂、2020年)、共編著に『高田保馬自伝「私の追憶」』(佐賀新聞社、2022年)、Sociology in Japan (Palgrave Macmillan:2025)などがある。
徳田剛(とくだ・つよし)
大谷大学社会学部教授。専門は、移民政策研究・地域社会学・宗教社会学など。現代を移動・移住者の比重が増えていく「移動社会」ととらえ、よそ者/ストレンジャーに関する学説研究、多文化共生の地域づくりや移民政策の国際比較研究、移民と宗教研究などに取り組んでいる。主な研究業績は『よそ者/ストレンジャーの社会学』(晃洋書房、2020)、『地方発 多文化共生のしくみづくり』(共編著、晃洋書房、2023)、「『移動社会』の特徴とコロナ禍によるその変質」(『地域社会学年報』35、2023年)など。
※研究例会は参加無料です。当学会の会員でない方もご参加いただけます。
※研究例会への参加を希望される方は、3月10日(火)までに下記のリンク先のGoogleフォームにて必要事項を記入し、送信してください。前日までにオンライン参加に必要な情報をお知らせします。
GoogleフォームURL:https://forms.gle/pvNLihhGqs5LV1Fx6
問い合わせ先:
日本社会学理論学会事務局
Email: sst[@]sst-j.com([ ]を削除してください)