大会・研究例会

第1回日本社会学理論学会奨励賞(大会報告)選考概要のご報告

 第1回日本社会学理論学会奨励賞(大会報告)の選考委員会が第18回大会終了後(9月3日)に開催され、同大会一般報告部会における、選考対象となる会員による18報告について、各部会司会者の評価を参考にして審査を行いました。その結果、以下の2報告に奨励賞(大会報告)を贈ることが決定されました。選考委員会による講評とともに、報告いたします。(以下、報告者の五十音順)

前田一歩(立教大学)「野宿者問題に対峙する戦前期東京の都市公園――『市民』を育てる公園管理思想」
【講評】本報告は、東京の公園行政の中心にいた井下清の公園管理思想を読み解くことで、戦前期の東京における公園・市民・野宿者の三者関係に新しい光を当てるものである。この読解はまた、今日の都市空間における野宿者の排除を考える上でも大きな手がかりを与える。行政と思想との関わり合いを社会学的な理論を踏まえて丁寧に読み取っている点、都市における公共性について社会学理論と形容するにふさわしい知見を提示している点において、本報告は奨励賞にふさわしいものと判断した。

宮部峻(立命館アジア太平洋大学)「宗教のリアリティを捉える――ロバート・ベラーの『象徴的実在論』の理論的意義」
【講評】本報告は、宗教社会学者ロバート・ベラーが1970年前後に提唱した「象徴的実在論」を検討し、宗教的次元を別の要因に還元せず「一種独特の実在」とするこの立場が、パーソンズとシュッツの影響を受けながら、当時のアメリカの状況を背景に急転回を見せたベラーの研究の根底にあることを示す。宗教社会学学説史やベラーにかんする先行研究を的確にレビューし、宗教と社会科学の対立の克服という現代的課題へのベラー理論の意義を提示した本報告は、その完成度と展開可能性から奨励賞に値すると評価された。

日本社会学理論学会奨励賞(大会報告)選考委員会
委員:浅野智彦、奥村隆(委員長)、数土直紀、三井さよ