日本社会学理論学会 The Society for Sociological Theory in Japan

The Society for Sociological Theory in Japan
日本社会学理論学会

[大会]第2回 大会 一般報告

第1セッション 司会:片桐雅隆(千葉大学)

13:00
「セックス」の脱構築の意義:発話のドン・ジュアン性と「セックス」をめぐる政治の関係を中心に
長野慎一(慶応義塾大学)
 セックスの脱構築は、セックスという、主体の物質的基礎を否定するという批判がある。セックスそのものに依拠することによってこそ、ある種の主体が置かれている従属的な状況を適切に分析することができると述べるのである。しかし、セックスという客観的なものが言語活動とは別に存在すると想定することが権力関係の再生産を促してしまう可能性はないだろうか。
 S.フェルマンは、発話が期せずしてその指示能力を支配しえなくなる性質を、ドン・ジュアン性と呼んだ。J.バトラーはドン・ジュアン性という言葉に直接言及しないものの、セックスをめぐって展開する権力関係の再編を分析する目的のために有用なキー概念であると想定しているように思われる。本報告では、セックスに関わる発話のドン・ジュアン性と権力関係の連関に着目することで、セックスという、物質そのものと呼ばれるものの存在に留保をつけその脱構築をはかる方法の意義を究明したい。
 
 
G.H.ミードの「マインド」論:心の社会学へのプロメゴリナ
徳久美生子(武蔵大学)
 本報告では、G.H.ミードの「マインド」論を手がかりに、人々の心を通して社会が成り立つメカニズムを問う社会学理論の可能性について検討する。
 ミードは、「マインド」という言葉を用いて人々の心を論じた。ミードにとって「マインド」とは、〈行為を方向付ける作用であり、その作用の表象と制御でありつつ、社会的態度の組織化に関わるもの〉であると考えられている。
 本報告では、行為を方向づけつつ行為から産出される「マインド」が社会の成り立ちや変化あるいはその維持に関与するメカニズムを描いたミードの「マインド」論を紹介する。その上でミードの「マインド」論に社会学理論に課せられる一般性と現実性というふたつの課題を超克する道筋があるのかを検討し、「マインド」論がもつ社会学理論の可能性を提示したい。
 
 
ルーマンの機能分析と観察:科学システムとしての社会学における理論形成
畠山洋輔(東京大学)
 初期ルーマンは、システム理論と機能分析とを両輪として自身の社会学理論の形成を行っていた。しかし、80年代以降、ルーマン理論の中で、機能分析は周辺的な位置に追いやられるようになり、代わって、オートポイエーシス的システム理論や差異理論と密接に関連づけられた観察概念が中心的な位置を占めるようになる。この変化は、ルーマンが自身の理論を自己言及的な普遍理論として提示していく過程で、機能分析を特権的な観察としないために必要とした変化であると考えられる。この観察概念を社会学理論と社会との関係を考察する際の手がかりとして用いることで、社会学理論を科学システムにおいて用いられる観察の図式として、そのような社会学理論の形成を科学システムの一作動として提示する。また、その科学システムにおける社会学理論(の形成)は、それが外部と直接的な影響関係にないからこそ、社会学の作動の準拠点として機能していることを説明する。

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